@phdthesis{oai:toyama.repo.nii.ac.jp:00005567, author = {北澤, 英徳}, month = {Feb}, note = {近年開発された制癌剤の多くが治療の効率が低い割に副作用の発現が顕著で,これを克服するための試みとして外科医と製剤技術者との共同研究が開始され,その成果の公開の場としてDDS学会が創設され十余年が経過している。 薬物送達システム(DDS)の日的は,標的とする病巣に薬剤を選択的に到達させ,必要な量を必要な時間作用させることにある。 すなわち,薬剤の標的へのターゲッティングと放出制御がDDSの最も重要な機能である。 DDSの導入により治療効果の改普が期待されている疾患としては細胞毒作用のため治療係数が小さく投与が難しい抗癌剤をはじめとして,腎毒性を有するアミノグリコシド系抗生物質,炎症部位へのターゲティングを目的とした抗炎症薬などがあげられる。 特に,癌化学療法においては,癌細胞が生体由来の細胞であるため正常細胞との違いが少な く,多くの抗癌剤は正常細胞にも作用するので,癌細胞を標的とするDDSはより効率の良い投与方法といえる。 輸送手段としては,リボソーム,マイクロスフェア,エマルジョンへ高分子結合体的などが開発されているが,臨床にまで用いられているDDSは極めて少ない。 1993年に発売されたスマンクスは,ネオカルチノスタチンをエステル結合させたスチレンーマレイン酸重合体のエマルジョン製剤で肝動注による肝癌のターゲティング療法として臨床で使用されているが,食欲不娠,悪心・嘔吐,発熱などの副作用が高率に認められ,患者のQOLは大きく影響を受けている。 このように副作用で投与量が制限される薬物の治療効率を高めるためには,生体内で分解される担体を利用し,標的臓器近傍で薬物を徐々に放出させ,全身の循環系への移行を極力抑制する製剤が必要と考えられる。 一方,癌の化学療法においてダウノルビシン,ドキソルビシンなどの抗癌剤の多剤耐性が大きな問題となり,その耐性化のメカニズムとしてP糖蛋白がクローズアップされてきた。 P糖蛋白は癌細胞内に流入した細胞毒の薬剤をエネルギー依作的に細胞外に排出するポンプ機能を有し,化学構造も作用機序も異なる種々の薬物に対し耐性化する分子量170kDaの特異な膜蛋白である。 P糖蛋白は様々な正常組織の細胞膜上に発現しており,特に肝臓及び腎臓では,生体異物の体外への排出ポンプとして薬物の排池に関与していることが,また,脳の網細血管では血液-脳関門機能として働いており,様々な生理機能に関与していることが明らかとなった。 このP糖蛋白の作用を阻害する薬剤としては,カルシウム拮抗薬のベラパミル,免疫抑制薬のシクロスポリンなどが有名で,多剤耐性克服のために臨床試験も実施されている。 本研究ではこの点を考慮した局所適用型製剤を試作し,モデル薬物にはシクロスボリンAとエトポシドを用いた。 また,体液中の薬物濃度測定にマイクロダイアリシスを用いてみた。 マイクロダイアリシスは脳の神経伝達物質や脳内薬物濃度を測定する手段として開発されたが,その後,血液,肝臓,筋肉など様々な臓器で応用され,薬物の体内動態の解析に利用されている。 マイクロダイアリシスの優れた点は,目的の臓器を破壊せずに持続的に臓器内の濃度を測定することが可能で,測定する際にサンプルの前処理が不要な上,他の成分のコンタミネーションを防ぐことができる点である。 本研究は,現在臨床で切除不可能な消化器腫瘍に対して,ブレオマイシンのような薬剤を直接患部にふりかけている医療の現状を知り,DDS製剤の開発を思い立った。 そこで,DDS基剤として既に報告例があり,生体内で分解・吸収されるコラーゲン及びフィブリンに着目し,局所適用型製剤の試作を試みた。 まず,コラーゲンと各種薬物との結合性をin vitroの溶出試験を用いて検討し(1章),更にアルギン般ナトリウムを添加することにより薬物の溶出がどのように変化するのかを検討した(2章)。 次に,適切な溶出挙動の確認されたアミカシン(AMK)含有アルギン酸ナトリウム添加コラーゲン製剤をラットの肝臓表面に局所適用し,そこから放山される薬物の動態についてマイクロダイアリシスを利用して検討した(3章) さらに,P糖蛋白阻害剤シクロスポリンA(CyA)とその基質エトポシド(VP-16)とを含有するコラーゲン製剤を試作し,これをラット肝臓表面に装精し,P糖蛋白阻害作用によるVP-16の体内動態及びVP-16静注後のCyAによる血中動態の変化と胆汁排泄抑制効果について検討した(4章)。 一方,坦体としてフィプリンを用いたドキソルビシン(DOX)含有アルギン般ナトリウム添加フィプリン製剤を調製し,ラットの腫場表面に装着し,腫瘍内の薬物濃度及び循環血中への移行挙動を検討した(5章)。 その結果,溶出試験では,コラーゲンのみで至適な放出抑制が得られなかったため,適度な親和性を持つ基剤について検討したところ,アルギン酸ナトリウムが,薬物のコラーゲンからの放出を抑制する物質として極めて有用であることを見出した。 次に,AMK含有コラーゲン製剤をラット肝臓表面に局所適用すると,肝細胞外液中のAMK濃度は長時間にわたり高いレベルに維持できることが判った。 さらに,CyAを添加したVP-16含有コラーゲン製剤は,CyAによるVP-16の胆汁排泄を抑え,肝細胞外液中のVP-16濃度を極めて高濃度に維持できることを明らかとした。 一方,DOX合フィブリン製剤をラットの腫瘍表面に装着すると,腫瘍内のDOX濃度は血中に比べ,極めて高濃度を維持できることを示した。 以上のことから,コラーゲン及びフィプリンをキャリアーとした局所適用型DDS製剤は極めて有用であり,治療効率の向上と副作用の軽減を目的とした剤型設計が可能であることを示すことができた。, Article, 富山医科薬科大学・博士(薬学)・乙第336号・北澤英徳・1997/2/26}, school = {富山医科薬科大学}, title = {局所適用型製剤の試作とその薬物動態のマイクロダイアリシスによる評価}, year = {1997} }