小論の目的はインフレーションが財産分配にどのような影響を与えるかをモデルを用いて理論的に考察することである。インフレーションにおいて財産がどのように形成され,所得分配ひいては財産分配に関する戦略的な経済諸量間の相互関係がどのようになるかを考察することが必要である。財産形成については,これはN.Kaldor分配モデルでは所得を利潤所得と賃金所得に機能的に分配する場合に影響を与える要因となっている。L. L. Pasinetti分配モデルではKaldor分配モデルの接近方法を利子所得を用いて補完し,財産形成と財産分配に関する財産政策の長期的見解を示している。A.Stobbe, P. P. Chang, G. Bombach, J. Kromphardt, L. Kowalski, W.J. Muckl,M.Neumann, A. C. Chiang, A. Maneschi, K. L. Gupta, E. Forsterなども財産形成と財産分配に関する財産政策の接近方法を示している。これらの接近方法は短期および長期における財産形成が所得分配に与える影響を通じて財産の形成と分配について考察しているが,「インフレーションにおける」財産形成や財産分配の長期的見解については考察していない。それだけにこの点に関する考察が必要である。